JR 洋光台駅前

海苔・お茶専門店「いしだ園」3代目若女将・由美子さん

(神奈川県横浜市在住)

小さい時からお茶屋になると思っていた

 うちの父は狭山茶の農家の三男で、田舎から出てきて知り合いもないのに、洋光台に商事会社を立ち上げたのが 昭和 50 年頃でした。高度成長期で景気は上向き、消費もどんどん拡大していた時期です。
 その後、バブル崩壊などで景気が悪化していき、更に少子高齢化で人口も減ってきましたのでスーパーを閉めて、 お茶屋に専念することにしました。現在、洋光台店と港南台店の2店舗で営業しています。

     物心着いた頃にはお茶屋で店番をしていたので、お茶屋さんになるのが当たり前だと思っていました。本格的に お店を継いだのは12年ほど前になります。
     私は一生働かなくても食べていける分の蓄えがあったとしても、お茶屋さんを続けていきます。

    お茶屋で大事にしていること

     家出るときに一服お茶を飲む。「朝茶はその日の難逃れ」とか「福を増す」ってことわざがあります。
     世の中の社会問題の八割方は、おいしいお茶で解決できると思っています。今って1億総国民ストレス社会で、 イライラしたり、落ち込んだり、すぐに事件や事故を起こしたり、最近多いですよね。これってお茶飲んで無いと 思うんですよね。コミュニケーション不足ですよ。お茶を飲みながらコミュニケーションすればほとんどの事は 解決しますよ。

       そもそも多くの方々は、美味しいお茶の味をご存知でないと思います。ペットボトルやティーバックのお茶で 飲む方が多く、お茶葉もなく、急須もない。お家でお茶をいれる習慣がない方もいらっしゃいます。
       こんなお茶の効能書きがあります。「茶の十徳」お茶を飲むことによって身に備わる十種の徳がつくことを いいます。気になったらお店に来てください。「茶の十徳」の中で私が一番好きなのは「朋友和合」です。初めて あった人とでもお茶を飲みながら話すことで仲良くできるということです。「お酒で世界平和を」って言った 酒屋さんがいますけど同じようなものです。私は日本茶で日本を元気にしたいと思います。お茶を飲めば気持ちが リラックスするし、お茶があるだけでコミュニケーションが上手くいきます。

         最近はわかりませんが、会社でも会議や取引業者さんにペットボトルでどうぞですが、役員会議や大切な お客様が来られた時は湯呑でお茶を出しますよね。航空会社の客室乗務員もファーストクラスのお客さまには、 ティバッグであったとしても茶葉のお茶を提供するそうです。一流企業の社長さんが来た時にもペットボトルを出して 「どうぞ」とは言えないですよね。最近、テレビで見る政府の会議でペットボトル、あれ急須で入れる美味しい お茶にしてみたらどうかなぁーって思います。

        日本髪でお店に立つようになった

         私が日本髪を結い着物を着てお店に立ち始めたのは10年位前からです。最初、エプロンして黄色いベストで 店番していたら、父が「工事現場みたいな格好するんじゃない」「品はちゃんと保ちなさい」って怒られたんです。 やはりお茶屋には日本髪や着物の方が説得力もあり、分かりやすいからですね。

          着物は昔から好きでしたし、日本髪は夜会巻きっていうマダム系の髪型が自分で出来なくて調べていたら、日本髪 を自分で結う事が出来る部活があったので月に一回銀座に通っています。今はそこの横浜支部長をやっています。 日本髪をやりたい方にはご紹介します。

            私みたいに365日着物で日本髪の人はいないでしょう。着物と日本髪でどこにでも行きます。北は北海道から 南は沖縄まで、深夜バスや飛行機も乗ります。この間は愛媛の内子座へ行き舞台にも立って来ました。去年は 羽田国際線の保安検査場通過してトルコに行ってきました。向こうでもずっと着物と日本髪で過ごしました。
             インパクトはありますから、めちゃくちゃ近づいてくる人も、逆に引く人もいっぱいいますね。

            お茶の魅力、美味しさを伝えるために

             「facebook」「instagram」などSNS 発信や、 毎月地元のタウン誌で私の枠を頂いているので記事を書いたりしています。それは8年程継続しています。

               WHO世界保健機関に健康の定義っていうのがあるんですが、体も心も社会的にも健康でないと本当の健康とは 言えないって書いてあります。お茶は、体も心も世の中的にもコミュニケーションすることができる健康飲料で あることを皆さんにお伝えして行きたい。さらにお茶屋や生産者を元気にしたい。消費量が減って自信 なくしちゃって、お店閉めたり、お茶の生産を辞める農家が増えています。日本人は昔からお米と梅干しとお茶で ちゃんと体の健康を維持してきた。それを私は優しく広めたいと考えています。

                 今はライブコマースっていうアプリに挑戦しているのですが、「ジャパネットたかた」みたいな感じで オンライン上で販売出来ればと思っています。今リアル店舗も正直言って客数激減してます。皆さんのところも そうだと思いますが、コロナで出掛けなくなって手土産は動かないし、家庭で主流の飲み物はコーヒーが ダントツです。
                 お茶について少しでも興味を持って頂きたいので、[どんなお茶葉でも入れる手順で全然味が変わること] [お茶の保存方法や持っているお茶を寝かせておいても美味しくならない]とか、 そういう事をお伝えして行きたいですね。
                 コミュニケーションすることによって、もっとお茶を飲みたくなったっていう人が結構いるので、店頭での対面 販売はもちろん、オンラインでの対面販売にも力を入れていきたいですね。

                   ここ洋光台のお店には私のファンだとか、商品のファンが来て下さる。港南台の店は88才になる母のファンの お客さんが来られます。皆さんとお話しながら私のお茶の知識を最大限に使ってお茶の魅力を発信し、お茶の本当 の美味しさを伝える事に取り組んでいきたいですね。

                  開業を目指す若い人たちに一言

                   コミュニティが大事。私、ここで育っているので、いまだに「由美子ちゃん、ユミちゃん」って言って くれるお父さん、お母さん世代の人たちもいるし、うちの家族や両親のこともよく知ってる人もいます。 お客さんからしても自分のお父さん、お母さんの時から付き合っている、私も子どもの時から顔みしりと言う事が 安心に繋がっているんでしょうね。一度商売を始めたら死ぬまでずっとそこにいるっていうのがいいんだろうね。

                     これから商売やる若い人達はライスワークじゃだめよ、ライフワークにしないとね。その地域にちゃんと住んで、 その地域に貢献できて、その地域の人達と一緒に幸せを作っていく。地域の人達のお役に立ち、地域の人達にいか にしたら応援してもらえるかってことを考え、一緒に地域の人達を巻き込んで、その後ろに商品があればいいよね。 ただ物を売る、サービス提供するだけじゃ絶対ダメ。長続きしないし、楽しくもない。そういうことを 楽しく感じられる人は商売やっても成功すると思います。

                       私はお茶屋の仕事が趣味です。お店は私の舞台なんです。余計なおせっかいばっかりしている私ですが、 やっぱり人間の基本って人の役に立つことです。人の役に立つことが一番うれしい。おばあちゃんが言っていた 「相手を喜ばせてあげられれば何も問題ない」って。その姿勢を大事にして仕事をしています。 皆さんにもそうあって欲しいと願います。