平塚

鳥、鶏卵卸・販売「鳥仲商店」鈴木 崇さん

(1970年生まれ、神奈川県平塚市出身)


店を継ぐきっかけは

 幼少期から祖母に「あなたがお店を継ぐのよ」と言われて育った。 最初から店を継ぐことに抵抗はなかった。 中 学生になった頃からは 夏休み・冬休みなどは 包丁を持って店の手伝いをしていた。 20 歳の時に 父親が 倒れたのを 機に店に入った。 他の店で 修行する事や 父親から手ほどきを受ける事もなかった。 最初は、ベテランの 職人さんた ちに認めてもらう為、ひたすら包丁を握って技術を身につけた。また 午前中は飲食店への配達・営業、午後は肉の卸・ 販売と人の倍以上の仕事をして認めてもらう努力をした。新しい飲食店を日曜日に営業し新規開拓もした。


鳥、鶏卵卸・販売産業を探る

 仕事の流れにも慣れて、鳥肉屋という業種をあらためて考えてみた。昔は市民生活も貧しかった事もあり、一番 安い鶏肉が良く売れた。生活が豊かになり、豚肉・牛肉の販売が増えるにつれて鶏肉の消費量も減ってきた。卵に 関しては昔から値段も安定して売れた。
 お客さんと直接顔を合わせて提供する店舗販売にも力を入れて、鮮度や手さばきにこだわったものを提供した。 また、焼き鳥やから揚げ、チキンロールやローストチキンなど惣菜メニューにも力を入れた。今では行列が出来る 時もある人気の惣菜になった。


とりまん誕生・パン製造販売秘話

 新しい商品を作って行こうと模索している中、平塚商工会議所の若手交流会「あきんど塾」で平塚の新たな商品 を開発しようと言う話があり、神奈川県の職員さんや他メンバーの方が協力し合って商品開発をした。うちの店も 同級生でもあるパン屋と共同開発で「とりまん」の開発を行った。パン生地をパン屋が担当し、うちが具を作った。 社内ではあまり期待されてなかったが、今では看板商品に加わっている。あの時ほど仕事をしていて楽しかったこ とはなかった。後にパン屋が閉店になり、同級生に頼んでうちの店内でパン製造販売を始めることにした。彼が店 に入った事でこれからも商品開発に力をいれることができる。


地域環境の変化、事業形態の変化

 店の周りの環境も大きく変化した。昔は駅周辺と西海岸には大きな商店街があったが、この辺は店舗を連ねた商 店街はなかった。約十数店舗のお店があり、普段使いのお店として賑わっていた。車社会になり郊外スーパーが増 え衰退した。今では数店舗だけとなった。

 近年、大きなマンションが完成し住民が増えた。また、工場跡地に商業施設の建設が決まり着工が始まっている。 人の流れが変わってくると思う。店に来るお客さんの年齢層が昔なじみの高齢者から若い人や外国人も増えてきて 店のパンや総菜に興味を持ってくれている。商業施設が完成すれば相乗効果で来店者が増えるのではと期待してい る。

 キッチンカーを導入してケ-タリング販売も行っている。厚木で行われたフードバトルイベントをきっかけにイ ベント参加の為に導入した。神奈川県内で開催されるイベントや湘南ベルマーレの試合など会社内でイベント班を 組織して行っている。デパートの催事などにも積極的に参加する。全ては祖父の代から続く「鳥仲」を知ってもら う為である。

 コロナの時は大変だった。卸し先の飲食店さんが全く営業しなくなって。業販が動かないので、店の小売りだけ では非常に苦しかった。イベントも無くなり、本当に大変だった。今は少しずつ戻ってきたが、前と同じ様にはな らないと思う。これからの販売商品や販売スタイルについても見直していく必要があると感じた。


事業継承について

 一番下の三男が、今大学生だがお店を継ぎたいと言ってくれている。次男は今東京で不動産系の仕事に就いたが、 飲食店もやりたいと言っている。次男は兄弟で店をやってもうまくいかないと思っているが、鶏肉を使った飲食店 を開くことを夢見ている。それを聞いて嬉しかったし、実行してもらいたい。どのような形であれ、この3代続く 事業を継承して新しい鶏肉の可能性に挑戦して欲しいと思う。

これから商売を始める若い人たちに

 そんな偉そうなこと言えないが、親父の後を継いで同じことやっていたら絶対にうまくいかないと思う。現状維 持ではなく、やっぱり新たな道をどんどん切り拓いていかないと広がっていかない。街の肉屋さん、八百屋さん、 魚屋さんなど昔からある小売り店は少なくなっている。
 一方で、事業を大きくして、すべて機械化したらブランド力は上がるけど、僕は逆につまんないなと思う。やっ ぱりこう手作り感にこだわっていたい。

 例えば「唐揚げ」の味や作り方についても、自分なりの工夫をしており、素材や下味、揚げ方などを変えてきた。 百人中百人絶対うちの唐揚げ美味しいって言うのは無理だが、まあ飽きられない「唐揚げ」を提供したいと思って おり、お客さんが鳥仲の「からあげ」を楽しみにしてくれるような品物にしたいと日々試行錯誤している。

 他にはイベントで「からあげ」など販売をしている。商売の一つとして仕事を楽しみながらやっていくことが大事。 息子にも話しているが、どうせやるなら 自分で楽しめることを探して 好き勝手、色々なことに 挑戦することだと。